WWF Japan 20周年記念キャンペーン

(1990年11月21日 毎日新聞)

WWFインターナショナル総裁・エディンバラ公フィリップ殿下

来年、創立20周年を迎えるWWFJapan(世界自然保護基金日本委員会、総裁・秋篠宮殿下)の記念キャンペーン「世界の自然を守る--大切な生物の多様性」が、WWFインターナショナル総裁・エディンバラ公フィリップ殿下をお迎えして始まった。

東洋のガラパゴス
ウエットランド

そのテーマは4つに分かれており、実施期間は1990月から1993年6月まで。「東洋のガラパゴス」といわれる南西諸島(鹿児島、沖縄県)の環境保護をまず取り上げ、続いて熱帯林、野生生物の取引問題、最後は、ウエットランドでしめくくる。

南西諸島(1990年11月~-1992年5月)

日本の中の常夏の国
マングローブ

南西諸島(鹿児島県南部の島々と沖縄県)は「日本の中の常夏の国」。マングローブが育ち、サンゴ礁が発達している。本州や北海道に厳しい寒さが訪れる冬でさえ、ここには明るい太陽が輝いている。

固有の種

当然、動植物もユニーク。固有の種が多く、日本でも南西諸島だけ、いや世界でも南西諸島だけという野生生物が少なくない。

イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナ

例えば、イリオモテヤマネコ、アマミノクロウサギ、ケナガネズミ、トゲネズミなど。鳥類ではルリカケス、アカヒゲ、ノグチゲラ、ヤンバルクイナ……。

ヤンバルテナガコガネやリュウキュウアユ

両生・は虫類、昆虫、魚類にも固有種が多く、分布は南西諸島だけ、話題は全国区という例が目白押しだ。まだ発見されて数年しかたっていない大型の甲虫・ヤンバルテナガコガネやリュウキュウアユなどは、野生生物に関心のある人なら、きっと知っているだろう。

奄美大島
アマミノクロウサギ

種の多様性に富む宝庫、南西諸島の自然。かつて奄美大島を訪れて、アマミノクロウサギなどを観察されたエディンバラ公は、「この豊かな自然を、みなさんは責任を持って守っていただきたい」と述べられた。

サンゴ礁、ノグチゲラ、ケナガネズミ
IUCN(国際自然保護連合

そのたぐいまれな南西諸島の自然が病んでいる。世界的にみても素晴らしいサンゴ礁の多く(一説には90%)が失われた。イリオモテヤマネコは約100頭、ノグチゲラも約100羽が残るだけ。日本最大の美しい樹上性のケナガネズミは専門家さえ観察が困難になった。リュウキュウアユは沖縄県では数年前に絶滅したとされ、最後のとりでとなった奄美大島でも4本の川に、わずかに生き残っているだけだという。こうした種の大半は、IUCN(国際自然保護連合)が作成した「生存を脅かされている種のレッド・リスト」にも載せられている。

珍しい野生生物
独自の生態系

この南西諸島に限らず、海にかこまれた島には珍しい野生生物が残っていたり、独自の生態系が成り立っているケースは多い。しかし、島の生態系は極めてもろく、大規模な開発や土地の造成、ダムの建設などが、自然に与える打撃は大きい。それが目に見えるようになってからでは手遅れになる。

南西諸島自然保護特別委員会
希少種、固有種

このためWWFJは、早くから地元出身の池原貞雄琉球大名誉教授(動物学)を委員長に南西諸島自然保護特別委員会を設け、調査や提言を行ってきたが、今回はさらに一段と突っ込んだ調査と保護の推進に努めることになった。例えば希少種、固有種などのために新たな保護区の設定を求めることも考えられる。

熱帯林(1991年7月~1991年11月)

種と遺伝子の宝庫

種と遺伝子の宝庫といえば、熱帯林。とくに熱帯雨林にまさるところはない。その熱帯雨林が急速に失われているのは周知の事実だが、ごく最近、これまでの指摘以上に失われていることが明らかとなった。

東南アジア
森林破壊

熱帯林の消失には、さまざまな原因が考えられる。しかし、例えば日本が東南アジアの木材の最大の輸入国であるという事実は、森林破壊と無縁だとはいえず、切りっ放しは絶対に許されないだろう。

ボルネオのサラワク州(マレーシア領)
森林伐採

とくにボルネオのサラワク州(マレーシア領)での森林伐採は激しく、あと10年で消滅するだろうといわれている。

環境アセスメント
政府開発援助(ODA)

このため、熱帯林の保護についての一般の認識を高めようと、日本の消費者、政府、企業などに働きかけることになった。熱帯木材の浪費的な使用をやめるよう呼びかけるとともに、その輸入は、森林が持続可能なレベルで生産されている地域からに限るよう各方面で運動。日本からの経済援助も、自然破壊につながらないよう十分な環境アセスメントと検証が行われるよう求めていく。政府開発援助(ODA)も環境面への比重を大きくし、とくに熱帯林保護のためのものを増やすよう働きかける。

野生生物の取引(1992年2月~1992年5月)

生息地の破壊
毛皮やハンドバッグ、ベッコウ

野生生物の存続を脅かすものとしては、生息地の破壊のほかに、商業目的の取引がある。日本は、アメリカに次いで世界第二の野生生物の消費国だといわれており、輸入しているものは、動物園やペット用の生きた動物から、毛皮やハンドバッグなどの製品、メガネのフレームなどに使われるベッコウまで多方面にわたっている。

ワシントン条約
国際取引(ODA)

こうした野生生物の国際取引を規制するために1975年、ワシントン条約が結ばれたものの、日本の場合、留保の数が多いうえ、日本国内での施行が十分でないこともあって、条約違反の取引や不正な輸入が相次いでいる。

アフリカゾウ保護行動計画
ワシントン条約の締約国会議

このため、1992年3月、日本で初めてワシントン条約の締約国会議が開かれるのに合わせて消費者に訴え、需要を減らす一方、政府に留保の撤回、国内法の整備を働きかけていく。ODAから、アフリカゾウ保護行動計画など絶滅のおそれのある種の保護のための基金への拠出--も求めていく予定だ。

ウエットランド(1992年12月~1993年6月)

湿地、湿原、河川、湖沼、干潟
洪水の防止、水質保全や水の供給

湿地、湿原、河川、湖沼、干潟などウエットランドは、生産性の豊かな生態系で、熱帯雨林とともに種の宝庫。水鳥や魚類の産卵、生育場所となるだけでなく、洪水の防止、水質保全や水の供給など、人間社会にとっても大切な役割を果たしている。

ラムサール条約
釧路湿原、クッチャロ湖、伊豆沼

このウエットランドが、かんがい、埋め立て、廃棄物による水質汚染などによって、目に見えて減少したり、存在を脅かされたりしてきたので、その保護のために1971年、ラムサール条約が結ばれた。日本の釧路湿原、クッチャロ湖、伊豆沼・内沼を含め、これまでに500地点以上(総面積約3000万ヘクタール)が国際的に重要なウエットランドとして登録されている。

釧路市

1993年6月、このラムサール条約の締約国会議が釧路市で開かれるのを機会に、日本の主要なウエットランドを調査、とくに貴重な地域を登録するよう運動。ウエットランドの重要性を各方面に訴え、開発途上国のウエットランド保護のための日本政府の援助を求めていく。

WWF Japan 脅威は人類自身--エディンバラ公が訴え

(1990年11月21日 毎日新聞)

WWFJ総裁の秋篠宮殿下、秋篠宮妃殿下

WWFJ(世界自然保護基金日本委員会)の設立20周年を祝う記念ディナーパーティーが、WWFインターナショナル総裁・エディンバラ公フィリップ殿下、WWFJ総裁の秋篠宮殿下、秋篠宮妃殿下をお迎えして、1990年11月17日午後6時半から東京・品川の新高輪プリンスホテルで開かれた。

大来佐武郎WWFJ会長
野生生物保護

野生生物保護の国際的な拠点になっているWWFの活動を一層盛り上げようと約700人が参加。大来佐武郎WWFJ会長が「日本人は経済を発展させることには熱心だが、環境問題には関心が乏しいという評価が世界に定着している。考え直さなくてはならない問題だ」とあいさつ。続いて、エディンバラ公が次のように問いかけられた。

森林伐採
生態系のかく乱

「水や空気をよごし、世界の気候が変わるほど森林を伐採しているのは、邪悪な悪魔ではなくて、ほかならぬ人類自身。水資源も自然林も水産資源も、再生産できないようなスピードで開発され、汚染と生態系のかく乱が、多くの生物種の存続を脅威にさらしている。

コンクリートジャングル
オゾン層破壊

われわれは、子孫が、汚染された過密なコンクリートジャングルに、野生動物が消えてしまった砂漠のような土地に、下水と化した川のほとりに、オゾン層が破壊され危険な紫外線にさらされた大地に、住むことを望んでいるのだろうか。そうでないというのなら、ぜひ、WWFの活動を支援してほしい。われわれは最善を尽くしたのだという気持ちを抱けるように、みなさんの協力をお願いしたい

WWFJ

そして、秋篠宮殿下が「WWFJは4つのキャンペーンを始めます。だが、それで先進国の自然が守られたとしても、途上国の自然を破壊したのでは、正しいやり方とはいえない。世界は、いま、日本の大きな経済力が環境の保護に生かされるのを期待している。われわれには、その期待に応える責任がある。ここにお集まりの方々に、ぜひ、その水先案内になっていただきたい」と呼びかけられると、会場から大きな拍手が起こった。

名称変わり会員増図る WWF日本委員会

(1988年6月21日 朝日新聞)

世界野生生物基金(WWF)日本委員会

世界自然保護基金日本委員会
パンダのマーク

パンダのマークでおなじみの世界野生生物基金(WWF)日本委員会が、このほど世界自然保護基金日本委員会に名前を変えた。発足以来の希少野生生物の保護活動から、むしろその住み場所である熱帯林や湿原などの保護へと活動の中心を移している実態にあわせるのが改称の目的。国際本部(スイス)が改称したことにも伴うものだが、WWFの略称は変わらない。日本委員会ではこの名称変更をきっかけに、会員数の増加など運動の盛り上がりを目指す。

World Wide Fund for Nature
World Wildlife Fund

新しいWWFは、World Wide Fund for Natureの略。従来のWorld Wildlife Fundが「珍しい動物を守る会」というイメージが強すぎるということで、国際本部は1987年の創立25周年記念総会から新しい名前を使い始めた。

WWF会員

日本のWWF会員は、現在約4000人。米の40万人、英国の20万人はもちろん、香港の2万人と比べても見劣りする。

四万十川流域
トンボ保護区

日本委員会でも、高知県中村市の四万十川流域にトンボ保護区を作ったりする地味な活動を続けているが、いまひとつ全体としての盛り上がりに欠けるのも事実。大来佐武郎会長(元外相)は「日本人も潜在的には自然保護の意識は高いと思う。今がひとつの転換期じゃないですかね」と話す。1988年8月末までを、会員増加キャンペーン期間として、入会金を免除している。

WWFがサミット首脳あてに「熱帯林保護に具体的行動を」と書簡

(1989年7月13日 毎日新聞)

世界野生生物基金

パリのアルシュ・サミット(先進国首脳会議)
熱帯林保護政策

熱帯林保護の世界的なキャンペーンを展開している「世界自然保護基金」(WWF、本部スイス、総裁・英フィリップ殿下)は1989年7月12日、パリのアルシュ・サミット(先進国首脳会議)に出席する各国首脳にあて、「サミットでは、熱帯林を破壊から守るには言葉だけでなく、具体的な行動の約束をして欲しい」とする書簡を送った。サミットの書簡はWWF本部事務局長の名前で出されたもので、1)熱帯林保護のため、資源国の債務を軽減し、資源破壊の動きにブレーキをかけてほしい2)持続的な熱帯林保護のための資金を、各国間、二国間の援助によって充実してほしい3)熱帯木材の貿易にかかわる国際機関に対し、資源保護を促進するための価格政策を守るよう指導してほしい--など具体的な熱帯林保護政策をとるよう求めている。

南洋から来た木材
熱帯木材政策

WWFは、1989年4月「南洋から来た木材」という報告書をまとめ、その中で日本の熱帯木材政策を批判、具体的勧告をしている。

森林道路建設
木材資源の無駄づかい

報告書は1)日本は援助の名のもとに森林道路建設などを進めているが、実際には商社のもうけのためで、破壊につながり、やめるべきだ2)一度使って廃棄するコンクリートの枠組み、わりばしのような木材資源の無駄づかいをやめ、付加価値の高い輸出に移行させるべきだ--などと勧告。

WWF本部
熱帯木材の保護

WWF本部がサミットに送った書簡は、この対日勧告も踏まえたもので、日本政府としては、世界的な批判の矢面に立っている熱帯木材の保護や輸入や消費に対する政策の転換を求められることになりそうだ。

アルシュ・サミット
乱獲伐採

アルシュ・サミットでは環境問題が主要テーマ。なかでも、乱獲伐採で激減している東南アジア、南米の熱帯雨林に焦点が当たる。この点、西欧諸国が国民の高い危機意識から、熱帯木材の不買運動にまで発展しているのに対し、日本政府の考えは「輸入は輸出国の利益。切った分は植え替えればいい」という消費指向の根本で変わっていない。