ヘッジファンド運用会社トップ5

会社名と説明
1位

シンプレクス

【正式名称】
シンプレクス・アセット・マネジメント
(Simplex Asset Management)

【創業メンバー】
三上芳宏
(ソロモン・ブラザーズ日本法人の債券トレーディング部門出身)

金子英司
(ソロモン・ブラザーズ日本法人のシステム部門出身)

日興証券(出資企業)

水嶋浩雅(みずしま・ひろまさ)
(日興証券出身)

機関投資家向けを主体とする運用会社。


【投資戦略】
バリューアップ

【設立】
1999年

和製ヘッジファンドの草分け

和製ヘッジファンドの草分け。設立当初は債券アービトラージ戦略を中心とする運用がメインだった。その後、債券の利回り低下に伴い裁定取引の妙味が薄れてきたこともあり、株式に軸足を移した。

ソロモンの債券チーム(明神組)が源流

米国有数の投資銀行ソロモン・ブラザーズで債券の裁定取引(アービトラージ)運用に携わっていたメンバーが中心となって発足した。日本におけるソロモンの債券裁定取引チームは1980年代に明神茂氏が立ち上げ、急拡大させた集団である。ソロモン米国本社では伝説のトレーダー、ジョン・メリウェザー氏(後にLTCMを創業)が率いていた。(参考→

日興証券が出資

1997年、ソロモンが米シティ銀行に吸収合併されて事実上解体される。敏腕ぞろいだったソロモンの債券部門のメンバーは世界各地でおのおの独立したが、三上芳宏ら日本のチームはヘッジファンド設立へと動いた。

水嶋浩雅氏

その情報を聞きつけたのが日興証券の水嶋浩雅氏だった。水嶋氏は日興の経営陣を説得し、出資させることに成功する。水嶋氏は日興に籍を残しながら、社外役員として新会社に参画した。

水嶋氏は東京都出身。1977年に早稲田大学(商学部)を卒業した後、日興証券に入社。

MBO

2005年10月、新たに株式ファンドを立ち上げるのに伴い、創業者・三上芳宏氏の後任として社長に就任した。さらに、MBO(経営陣が参加する買収)によって主要株主となった。

動画

<水嶋浩雅氏が語る▼>
2位

キャプラ

【正式名称】
キャプラ・インベストメント
(Capula Investment)

【創業メンバー】
浅井将雄(あさい・まさお)
(UFJ銀行出身)

ヤン・フー
(UFJ銀行出身)

【投資戦略】
国際債券

【設立】
2005年

債券系では世界有数の規模を誇る。所在地は英国。「和製ソロス」と呼ばれる浅井将雄氏が経営する。

和製ソロス・浅井将雄氏

浅井氏は愛知県一宮市生まれ。1990年に慶応大学を卒業し、東海銀行(現在:三菱UFJ銀行)に入社。

ロンドンで起業

2003年にロンドン赴任。UFJ銀行(当時)の英国証券子会社で債券などの運用業務をしていた。旧UFJ銀行と旧東京三菱銀行が合併することになり、浅井氏たちのチームの業務を縮小するという話になった。英国は新規参入しやすい環境だったので、同僚のヤン・フーと共に思い切って独立したという。2005年に英ロンドンで設立。2007年に日本法人を開設した。設立当初から急成長を遂げた。

金融危機を乗り切る

2008年に米証券大手のベアー・スターンズが経営危機に陥ると、ファンドは最初の正念場を迎えた。相場が激しく動くため、売ったり買い戻したりで一日の取引は1000件まで膨らんだという。社員たちは連日会社に泊まり込みで悲鳴を上げたが、最終的に利益を確保し、見事に生き残った。

動画

<浅井将雄氏が語る▼>
3位

タワー投資顧問

【正式名称】
タワー投資顧問株式会社
(Tower Investment Management)

【創業者】
谷村哲夫(たにむら・てつお)
(野村證券出身)

清原達郎
(野村證券出身)

【投資戦略】
日本株ロング・ショート

【設立】
1998年

清原達郎氏が運用してきた日本株ヘッジファンド「タワーK1ファンド」で有名。

創業者は谷村哲夫&清原達郎

谷村哲夫氏(たにむら・てつお)と清原達郎氏によって設立された。

谷村氏はNYU大学院から野村入社

谷村氏は大阪府出身。1983年に米国の有力校であるニューヨーク大学(NYU)の大学院を卒業。同年、野村証券に入社した。1990年CSファーストボストン入社。1996年「ゼ・セブン・アセットマネジメント香港」社長。1998年5月29日、41歳でタワー投資顧問の社長に就任した。

清原氏は野村からゴールドマン

一方、清原氏は東京大学を卒業後、1981年に野村証券に入社。ニューヨーク支店を経て、ゴールドマン・サックス日本支店に入社。1998年4月、タワー投資顧問の運用部長に就任した。(参考

「高速回転商い」への疑問

清原氏は野村証券時代、「高速回転商い」という手数料を手っ取り早く稼ぐ方法に疑問を感じていた。当時のバブル時代の野村には、顧客よりも会社利益を優先し、客に損をさせたことを自慢する文化があった。そんな清原氏はニューヨーク支店で、顧客も運用側も共に儲かることができるヘッジファンドの存在を知り、強い興味を抱いた。

25年間で93倍「タワーK1ファンド」

清原氏が立ち上げたタワー設立と同時に立ち上げたヘッジファンド「タワーK1ファンド」は1998年7月に運用開始。2023年6月、清原氏の引退に伴い閉鎖した。ITバブルと崩壊、リーマン・ショック、コロナといった荒波を越え、25年間で何と93倍の運用実績を築いた。

「割安小型株」に集中投資

タワーK1ファンドの投資先選定では、逆張りの発想とミクロへのこだわった。企業の潜在力への見極めを重視。世の中にあまり注目されていない「割安小型株」を発見した。経営者にも丹念に取材した上で集中投資した。

アナリストがカバーしない銘柄

小型株に注目した理由は、割安な銘柄が多いのと独自のリサーチがしやすいからだという。小型株は機関投資家が保有を敬遠する。アナリストもカバーしていない。銘柄の選別に手間はかかるが、日本の株式市場で一番儲けやすい方法だと確信したという。

4位

ベイビュー

【正式名称】
ベイビュー・アセット・マネジメント
(Bayview Asset Management)

【創業者】
米ロバートソン・スティーブンス・インベストメント・マネジメント

【投資戦略】
ロング・ショート

富裕層や機関投資家(企業年金など)向け。

米国の運用会社が前進

前身は、アメリカの独立系運用会社「ロバートソン・スティーブンス・インベストメント・マネジメント」の日本法人「RSアセット・マネジメント」。

日本人の経営陣がMBO

2002年、MBO(経営陣による買収)により、親会社から自社株を買い取って独立した日本企業になった。MBOに参加したのは、現社長の八木健氏や、「カリスマ・ファンドマネジャー」として有名だった佐久間康郎・運用本部長ら。

「カリスマ・ファンドマネジャー」佐久間康郎氏

佐久間氏は1965年10月、岐阜県生まれ。1988年に慶応大商学部を卒業し、朝日投信委託(第一勧業アセットマネジメント)入社。日本株アナリストを経て、1992年からファンドマネジャーとして運用を担当した。

「DKA株式オープン」で最高の評価

佐久間氏が朝日投信委託で担当した「DKA株式オープン」は、1997年4月から2002年3月まで約72%も上昇した。日経平均株価が約37%下落したのとは対照的だった。1999年度に「モーニングスター・アワード最優秀賞」を受賞。国内約800本の株式投信の中で最高の評価を得た。

2002年にCIO

2002年にベイビュー(当時RSアセット・マネジメント)に移籍。CIO(最高投資責任者/チーフ・インベストメント・オフィサー)に就任した。

日本株の私募投信を設定

それまでベイビューは、米国株式を専門とする運用会社として機関投資家の間で評判が良かった。しかし、それに甘んじることなく、日本株式の運用ビジネスに本格参入する。その中心的な役割をに担ったのが佐久間氏だった。さらに、日本株式アナリストとして有名だった佐々木登氏も入社。日本株のロング・ショート・ファンドの私募投信が設定された。

田沼豪氏(GOファンド)が25歳でファンドマネジャーに

なお、新興の「GOファンド」創業者の田沼豪(たぬま・ごう)氏も、ベイビューの出身。田沼氏は1990年群馬県桐生市生まれ。進学校の樹徳高校を中退し、自力で上智大学法学部に入学。一橋大大学院修了。2014年ベイビュー入社、25歳の若さでファンドマネジャーとなった。

5位

GCIアセット

【正式名称】
GCIアセット・マネジメント
(GCI Asset Management)

【創業者】
山内英貴
(日本興業銀行出身)

【投資戦略】
マルチストラテジー

【設立】
1998年

興銀のデリバティブ担当・山内英貴氏

創業者の山内氏は1963年生まれ。東京大学(経済学部)卒業後、日本興業銀行(現:みずほフィナンシャルグループ)に入社。為替トレーディング業務やデリバティブ業務に従事した。

米国株のファンド・オブ・ファンズ

2000年5月、興銀(同年9月から「みずほグループ」)を退社してGCIを設立。当初はアメリカのオルタナティブ投資家会社フェアフィールドと提携し、適格機関投資家向けファンド・オブ・ファンズ「フェアフィールド・GCI・ジャパン・シリーズ」を提供した。このシリーズは、米国株を対象とした「ロング/ショート」型ファンドなど4つのヘッジファンドで構成された。

著書「LTCM伝説」

金融専門の著述業でも有名だ。著書に「アジア発金融ドミノ」(東洋経済新報社、1999年)、「グローバル投資入門」(同友館、2001年)、「LTCM伝説」(東洋経済新報社、2001年、GCIスタッフによる共訳)など。

動画

<GCIの概要▼>