ヘッジファンドとは

ヘッジファンドは、値上がりしそうな銘柄を買い、一方で値下がりしそうな銘柄を空売りする投資集団です。「買い」と「売り」のバランスを取っておくことで、相場の下落から受けるリスクを軽減させる(ヘッジする)手法をとり、安定利益を狙います。

個人投資家の立場からみれば、相場変動に左右されやすい「買い一辺倒」の投資信託や個別銘柄の投資よりも“リスクヘッジ”がかかっている分、安心感を得やすいです。

株式だけでなく、債券、為替など複数の金融手法を組み合わせながら運用するのが一般的です。

ヘッジ(hedge)を直訳すると

ヘッジ(hedge)を直訳すると「損失・危機などに対する防止策」となる。ここから「ヘッジファンド」という名称が誕生しました。ただ、近年は運用戦略が多様化し、実態が当初の意味と乖離して面もあり、一種の便宜上の呼び名だと言えます。

機関投資家や富裕層

ヘッジファンドはアメリカが発祥です。誕生以来、機関投資家や富裕層から運用資金を集めてきました。年金基金や大学基金も加わりました。

21世紀になると、伝統的資産の代替投資の一環として、個人投資家にもヘッジファンドが売られるようになりました。投資信託の一種として扱われ、銀行や証券会社の窓口などで販売されるようになったのです。

組み合わせたファンドも

さらに、いくつかのヘッジファンドを組み入れて分散投資をする「ファンド・オブ・ヘッジファンズ」も生まれました。

現在、個人の大量の投資資金がヘッジファンド市場に流入しています。株価指数と連動する「インデックス・ファンド」を上回る利益が期待できる商品として、人気を集めています。

投機性

ヘッジファンドには投機的な“悪玉”のイメージがつきまとっています。とくに高利回りを狙う私募ファンドについては、投機的な動きが批判の対象になることがありました。

かつてはマレーシアのマハティール首相が「(米投資家の)ジョージ・ソロス氏のヘッジファンドがアジア通貨危機の引き金」と名指しで批判しました。

1998年10月に起こった円の対ドル大暴騰でも、日米経済のファンダメンタルズに関する認識の変化に加えて、ヘッジファンドによるキャリー・トレード(超低金利の円を借りて他通貨建てで運用する手法)やショート円ポジションの圧縮・解消を目的とする大量ドル売りが取りざたされました。

「絶対利回り追求型」

ヘッジファンドの中で、投資顧問などの専門家の間で「おすすめ商品」として評判が良いのが、「絶対利回り追求型」のタイプです。市場平均指数が右肩上がりにならなくても年10%以上のリターンをあげることを目指しています。

実際、割高株と割安株の取引を併存させるロング・ショート型は、利回りが高くなる傾向があります。

常に売りと買いの残を均衡させて全天候型の運用を狙うマーケット・ニュートラル型ヘッジファンドも、公的年金や大学基金からの好まれる傾向があります。

ヘッジファンドに投資資金が流入

マネージド・フューチャーズ

ヘッジファンドには、マネージド・フューチャーズという手法があります。この戦略は、現物市場には一切投資せずに、対象を先物・オプション(先物の売買の権利)市場に限定します。やや特異な存在です。

コモデティー・トレーディング・アドバイザーズ(CTA)とも呼ばれています。CTAの運用は、金融先物市場(通貨、債券・金利、株価指数)と、商品先物市場(エネルギー、非鉄・貴金属、農産物)の2つに大別できます。

3種類の運用スタイル

ヘッジファンドには、3つの運用スタイルがあります。

種類 内容
システム型 過去の相場のパターンをテクニカル分析した運用モデルが発信するシグナルに従って、人間の意志とは無関係に自動的に売買する。
自由裁量型 市場の需給関係やマクロ経済などのファンダメンタルズ分析による人間の自由裁量に基づいて人為的に運用する。
混合型 システム型と自由裁量型を混合して運用する。ハイブリッド型とも呼ばれる。

ロボット・トレーディング

以上の3つのうち、システム型が圧倒的に多数を占めています。その多くには、最先端AIが使われています。「ロボット・トレーディング(略称:AIトレ/ロボトレ)」と呼ばれるものです。

高速で自動発注

AIトレでは、コンピューターが24時間体制で世界中の先物市場を監視します。運用チャンスを発見すると、電子取引によってミリ・セカンド(千分の1秒)単位の速さで自動的に売買発注します。

シグナルに従う

AIトレーディングにおける取引の判断は、トレーディング・シグナルに従います。シグナルは、過去のパターンをテクニカル分析した運用モデルが発信します。人間の意思とは無関係に自動的に売買が行われることになります。

ブラックボックス

AIトレの運用モデルは、数学者や物理学者が金融工学に基づき独自に開発した複雑なクオンツ・アルゴリズム(数量的、定量的な計算方式)がベースになっています。運用システムの中身があまりにも難解なことから「ブラックボックス」とも呼ばれています。

投資行動の予想が困難

AIトレ(ロボトレ)は、ファンダメンタルズ重視の伝統的な従来の枠組みとは一線を画しています。アルゴリズムが複雑化しているため、投資行動を正確に予測することは困難になっています。

利食い(利益確定)のタイミング

AIトレーディングでは、取引結果を受け取ると自動的にポジション管理を始めます。利食い(利益確定)のタイミングを発見すると、電子取引で再び瞬時に自動的に反対の売買発注をします。

このため、システム型運用の投資対象となる先物は、取引所にダイレクトアクセスできる電子取引の環境が必須条件となります。

プレナスは混合型

一方、プレナス投資顧問は、ロボット・トレーディングではありません。最新鋭AIが採用されている点は同じです。しかし、人間である証券アナリスト等の知的判断が加味されるのが、プレナスの特徴となっています。システム型と自由裁量型を組み合わせて運用する混合型(ハイブリット型)に位置付けられます。

電子取引以外のリアルな市場

また、プレナスの助言内容は、主に電子取引以外のリアルな市場に活用できます。その理由は、プレナスのアドバイスをふまえて実際に取引を行うのは、それぞれの個人投資家だからです。

プレナス投資顧問はシステム型と自由裁量型を組み合わせた混合型

市場を主導

ヘッジファンドの資産規模の拡大によって、昨今のグローバル市場は様変わりしました。ヘッジファンドが主導する相場に変わってしまったのです。

しかし、これほどまでに巨大化し、市場に大きな影響を与えるようになったヘッジファンドについて、金融当局をはじめ市場関係者が深く理解している状況にはなっていません。

投資行動制約

そればかりか、ファンダメンタルズを無視したヘッジファンドのシステム運用よって乱高下する先物相場が、実体経済に影響を与えています。各国の金融当局の政策や市場関係者の投資行動まで制約するようになっています。

ヘッジファンドの実態を正しく理解せず、その投資行動が与える影響も知らずして市場に参加する行為は、かなり無謀なものだといえます。

特徴(投資顧問との比較)

違い 内容
空売りの有無 ヘッジファンドは、プレナス投資顧問のような助言会社や一般的な投資運用会社などと比較して様々な特徴を有する。
第1は投資戦略の自由度が高いことだ。ヘッジファンドは空売りもできるし、先物・オプションなどのデリバティブ商品も自由に使える。さらに、投資家を限定することによって情報の開示義務も少なくしている業者が多い。規制や監督もほとんど受けない。
プレナス投資顧問のような助言会社は、日本では金融庁の規制対象になっている。
絶対利益の追求 ヘッジファンドは、どんな相場環境でもプラスの絶対利益を追求し、運用資産の何倍もの資金を借り入れてレバレッジ(テコの原理)を利かせて運用する。
一方、プレナス投資顧問は、「買い」の対象となる銘柄の発掘と助言に注力している。
成功報酬の徴収 ヘッジファンドのファンドマネジャーは通常の運用手数料に加えて、成功報酬を受け取る。さらに、自己資金を自らが運用するファンドに出資するのが原則だ。
これに対して、プレナス投資顧問は月額の顧問料(助言サービス費用)が発生するが、成功報酬はない。

歴史

ヘッジファンドの歴史は、雑誌『フォーチュン』の編集長で社会学者でもあったアルフレッド・ジョーンズが最初にファンドを設立した1949年にまで遡ります。

ジョーンズのファンドがそれまでと大きく違ったのは、ただ単純に株を買うだけでなく、空売りも組み合わせて、「保険つなぎ」(ヘッジ)を行ったことです。

ソロスファンドがポンドを空売り

ヘッジファンドが国際金融市場で大きな注目を集めたのは1992年の欧州為替相場メカニズム(ERM)危機だ。

ソロスファンドが英国通貨ポンドを空売りする一方で、イングランド銀行は1790億ドルもの資金を投入して買い支えました。しかし、ポンドの下落を阻止することができませんでした。

莫大な利益(ハイリターン)

この結果、英国はERMからの離脱を余儀なくされました。ソロスファンドはこの取引で莫大な利益を得ました。

これを契機に、ヘッジファンドは絶大な力で世界の相場を自由自在に操って膨大な利益を稼ぐ存在として、「ヘッジファンド=ハイリターン」のイメージが広がりました。

LTCMの巨額損失

その後、ヘッジファンドが国際金融市場を危機に陥れる事件が起きます。1989年のロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の巨額損失でした。

LTCMはスタンフォード大学教授のマイロン・ショールズとハーバード大学教授のロバート・マートンという2人のノーベル賞受賞者が主導していました。しかし、あっけなく破綻し、世界の金融市場を危機に陥れました。ヘッジファンドが、巨額なポジションで世界の金融システムを不安定にさせる存在だということが、広く知れ渡るようになりました。

裁定取引の機会の喪失

1999年にユーロの銀行間取引が開始された結果、大手ヘッジファンドは欧州各国間の通貨や債券の裁定取引が不可能になりました。

さらに、金融市場のグローバル化の進展が、為替や債券マーケットの非効率性を急速に奪い、裁定取引による収益機会が失われます。すると、大手ヘッジファンドは株式市場にどっと押し寄せました。

2000年には、ソロスファンドの縮小やタイガーファンドの清算など大手ヘッジファンドの苦戦が次々と表面化しました。

情報の優位性が減る

さらに、IT化によるインターネットの加速度的な普及で、誰よりも早く情報を入手するヘッジファンドの優位性がやや失われたように見えました。株式市場でも収益を上げることが困難になったのです。

グローバル化とIT化という2つの潮流によって、市場の非効率性を見つけ、レバレッジを多用して世界の金融市場でハイリスクの巨額投資を行う「グローバル・マクロ」での持続的な収益機会が奪われたのです。

世界の金融市場のIT化
ブティック型の投資顧問

大手ヘッジファンドが凋落する一方で、グローバル化とAI化にも順応し、厳しいリスクコントロールも視野に入れた投資顧問が日本でも次々と誕生した。その一つが、プレナス投資顧問です。

2010年代になると、小規模で運用戦略を専門化したブティック型の投資顧問が健全な規模に成長した。プレナスは、助言業界の浸透の担い手となりました。

投資戦略の種類

ヘッジファンドの投資戦略には、以下の種類があります。

種類 内容
アービトラージ型 市場における価格の歪みを捉える裁定取引で収益を追求する。「転換社債アービトラージ」「債券アービトラージ」「株式マーケット・ニュートラル」などのスタンスがある。
ディレクショナル型 相場の方向性を捉えて収益を追求する。「株式ロング・ショート」「グローバル・マクロ」「空売り」「マネージド・フューチャーズ」といった戦略が駆使される。

このうち投資戦略別資産構成比が最も多い「株式ロング・ショート」は、株式市場で値上がりが期待できる銘柄を買い持ち(ロング)、値下がりが期待できる銘柄を売り持ち(ショート)にして利益を追求する戦略だ。
特化型 特定の運用方式や地域に特化して収益を追求する。「イベント・ドリブン」「新興国市場」「マルチ戦略」など。
アービトラージ型のヘッジファンドは、市場における価格の歪みを捉える裁定取引で収益を追求する。「転換社債アービトラージ」「債券アービトラージ」「株式マーケット・ニュートラル」などのスタンスがある。

【動画】ヘッジファンドはコンピューターサイエンスの専門人材を求めている。▼

世界有数のヘッジファンドのションフェルド・グループ(Schonfeld Strategic Advisors)の最高投資責任者(CIO)、ライアン・トールキンのインタビュー動画です。Youtube(ユーチューブ)のチャンネルは「Business Insider Japan」。